ガバナンスのパースペクティブ: 統制と監視
ガバナンスのパースペクティブでは、組織の利益を最大化し、トランスフォーメーションに関連するリスクを最小限に抑えながら、クラウドの取り組みをオーケストレートすることに重点を置いています。これは、次の図に示す 7 つの機能で構成されています。一般的なステークホルダーとしては、最高トランスフォーメーション責任者、CIO、CTO、CFO、CDO、CRO などが挙げられます。
AWS CAF のガバナンスのパースペクティブの機能
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プログラムおよびプロジェクト管理 – 相互に関係するクラウドの取り組みを柔軟かつ調整された方法で提供します。複雑で横断的なクラウドトランスフォーメーションの取り組み (特により従来型の構造の組織) では、慎重な調整が必要です。これらの相互関係の多くはその時々でのみ明らかになるため、プログラム管理は特に重要です。複数の取り組みを調整して、コスト、スケジュール、労力、利益を最適化または統合することで、相互関係を管理します。
ビジネスのスポンサーと定期的にロードマップを検証し、問題があれば適時にシニアリーダーシップにエスカレーションして、説明責任と透明性を高めます。アジャイル手法を採用して、広範な予測を行う必要性を最小限に抑えつつ、経験から得られた知見によって適応して、トランスフォーメーションを進めることができるようにします。変更に対応できるようにするために、適切に優先順位付けしたバックログを作成し、エピックやストーリーのかたちで作業を構成します。
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利益管理 – クラウドへの投資によるビジネス上の利益が確実に実現され、持続するようにします。トランスフォーメーションの成功は、その結果として生じるビジネス上の利益
によって決まります。必要な利益を事前に明確に把握しておけば、クラウドへの投資に優先順位を付けて、トランスフォーメーションの進捗を長期的に追跡できます。メトリクスを特定し、必要な利益を数値化 して、関係するステークホルダーに伝達します。利益のタイミングと期間を戦略目標に合わせます。利益の実現のロードマップに利益の提供を組み込みます。実現した利益を定期的に測定し、利益の実現のロードマップに対する進捗を評価して、必要に応じて期待される利益を調整します。 -
リスク管理 – クラウドを活用して、リスクプロファイルを低減することができます。インフラストラクチャの可用性、信頼性、パフォーマンス、セキュリティに関連するオペレーションリスク
と、評判、ビジネスの継続性、変化する市場に迅速に対応する能力に関連するビジネスリスクを特定して数値化します。クラウドがリスクプロファイルの低減にどのように役立つかを理解し、アジャイルのケイデンスの一部としてリスクを繰り返し特定および管理します。クラウドを活用して、インフラストラクチャの運用や障害に関連するリスクを低減することを検討します。インフラストラクチャへの多額の先行投資の必要性を減らし、不要なアセットを購入するリスクを低減します。ユーザーのニーズに応じて、クラウドを活用してリソースのプロビジョニングとプロビジョニング解除をすぐに行い、調達のスケジュールのリスクを低減します。 -
クラウドの財務管理 – クラウドの支出を計画、測定、最適化します
。クラウドがもたらすリソースのプロビジョニングの容易さや俊敏性のメリット と、チームのクラウドの支出に対する財務上の説明責任 を併せて考えます。これにより、チームはクラウドワークロードを継続的に最適化 して、最適な料金モデル を使用できるようになります。クラウドに関連する財務上の役割と責任を明確にし、財務、ビジネス、テクノロジーの各組織 の主要なステークホルダーがクラウドのコストについて共通の理解 を持つようにします。より動的な予測 と予算編成 のプロセスに進化させ、コストの差異や異常をより迅速に識別します。 アカウント構造とタグ付け戦略を、組織と製品のクラウドへのマッピングに合わせます。アカウントとコスト配分タグを構造化し、クラウドリソースを特定のチーム、プロジェクト、ビジネスの取り組みにマッピングして、使用パターンを詳細に把握します。コストカテゴリ
を定義し、カスタムルールを使用してコストと使用状況の情報を整理して、ショーバックやチャージバックを簡素化します。一括請求 (コンソリデーティッドビリング) を使用すると、クラウドの請求を簡素化して、ボリュームディスカウントを実現できます。俊敏性への影響を最小限に抑えつつ、スケーラブルな方法でクラウドの使用を管理するガードレールを作成します。 技術的負債を負わないように、ワークロードが適切に設計
され、最もコスト効率が良い方法でオペレーションが行われるようにします。需要ベース と時間ベース の動的なプロビジョニングを活用して、必要なリソースに対してのみ支払うようにします。アイドル状態または十分に活用されていないクラウドリソースに関する支出を特定して廃止 することで、クラウドのコストを削減します。 オンプレミスとクラウドのソフトウェアライセンスの管理
を一元化して、ライセンス関連のコストの超過とコンプライアンス違反を減らし、申告ミスを回避します。クラウドリソース に含まれるライセンスと、所有 しているライセンスを区別します。ライセンスの使用にルールベースの管理を活用して、新規および既存のクラウドへのデプロイにハード制限やソフト制限を設定します。ダッシュボードを使用してライセンスの使用状況を可視化し、ベンダーの監査を迅速化します。コンプライアンス違反に対するリアルタイムのアラート を実装します。 -
アプリケーションポートフォリオ管理 – ビジネス戦略をサポートするために、アプリケーションポートフォリオを管理および最適化します。アプリケーションはビジネス能力を支え、それを関連するリソース
にリンクさせます。正確で完全なアプリケーションインベントリは、合理化、移行、モダナイゼーションの機会を識別するために役立ちます。効果的なアプリケーションポートフォリオ管理機能により、アプリケーションの無秩序な増加を最小限に抑え、アプリケーションのライフサイクル計画を促進し、クラウドトランスフォーメーション戦略との継続的な整合性を確保します。 最も重要なアプリケーションから始めて、包括的なビジネス能力の観点から定義し、基盤となるソフトウェア製品や関連するリソースにマッピングします。エンタープライズアーキテクチャ、IT サービス管理 (ITSM)、プロジェクト/ポートフォリオ管理など、関連するエンタープライズシステムのデータを利用することで、各アプリケーションの全体像を把握します。主要なテクノロジーやビジネスのステークホルダー (アプリケーション所有者を含む) を特定し、アプリケーションのメタデータを定期的にエンリッチ化および検証するように要求します。組織がアプリケーションへの投資から得られる価値を最大化するために、アプリケーションポートフォリオの健全性を定期的に評価します。
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データガバナンス – ステークホルダーの期待に応えるために、データに対する権限と管理を行使します。ビジネスプロセスと分析能力は、正確、完全、適時、関連性の高いデータに依存しています。データの所有者、スチュワード、管理者などの重要な役割を定義して割り当てます。ガバナンスにフェデレーション (データメッシュ
) アプローチを採用することを検討します。データディクショナリ、分類、ビジネス用語集などの標準を指定します。参照する必要があるデータセットを特定し、参照データエンティティ間の関係をモデル化します。 データライフサイクル
ポリシーを策定し、継続的なコンプライアンスの監視を実施します。戦略およびオペレーション上のデータのニーズに合わせて、データ品質 への取り組みに優先順位を付けます。データ品質標準を確立します。主要な品質特性、ビジネスルール、メトリクス、目標を特定します。データバリューチェーンのすべての段階でデータ品質を監視します。データ品質の問題の根本原因を特定し、ソースで関連するプロセスを改善します。重要なデータ製品にデータ品質ダッシュボードを実装します。 -
データキュレーション – メタデータを収集、整理、アクセス、エンリッチ化し、データカタログにデータ製品のインベントリを整理するために使用します。データカタログは、データコンシューマーが該当するデータ製品をすばやく見つけて出所や品質などのコンテキストを理解できるようにすることで、データの収益化やセルフサービスの分析を促進します。
データカタログのモデレーションを担当するリードキュレーターを指定します。データ収益化戦略に従って、構造化データや非構造化データなどの主要なデータ製品をカタログ化します。リネージなど、関連する技術およびビジネスのメタデータを特定して収集します。標準のオントロジー、ビジネス用語集、オートメーション (機械学習を含む) を活用して、データのタグ付け、インデックス作成、自動分類を行います。必要に応じて手動でタグ付けして、個人を特定できる情報 (PII) を適切に処理します。ソーシャルキュレーションを使用したクラウドソーシングによるデータエンリッチメントを検討します。具体的には、データコンシューマーがデータ製品の評価、レビュー、注釈付けを行えるようにすることを検討します。