REL10-BP02 マルチロケーションデプロイ用の適切な場所の選択 - 信頼性の柱

REL10-BP02 マルチロケーションデプロイ用の適切な場所の選択

期待される成果: 高可用性のためには、(可能なときには) 常に、ワークロードコンポーネントを複数のアベイラビリティーゾーン (AZ) にデプロイします。回復力要件が極端に高いワークロードについては、マルチリージョンアーキテクチャのオプションを慎重に評価してください。

別の AWS リージョンへのバックアップを備えた回復力の高いマルチ AZ データベースデプロイを示す図

別の AWS リージョンへのバックアップを備えた回復力の高いマルチ AZ データベースデプロイ

一般的なアンチパターン:

  • マルチ AZ アーキテクチャで要件を満たせるときに、マルチリージョンアーキテクチャの設計を選択する。

  • 回復力要件とマルチロケーション要件がアプリケーションコンポーネント間で異なる場合に、コンポーネント間の依存関係を考慮しない。

このベストプラクティスを活用するメリット: 回復力のためには、防御レイヤーを構築するアプローチを使用する必要があります。1 つの層では、複数の AZ を使用して高可用性アーキテクチャを構築することによって、小規模で一般的な混乱に対して保護します。もう 1 つの防御層では、広範囲の自然災害やリージョンレベルの混乱など、まれな出来事に対して保護します。この 2 番目の層には、複数の AWS リージョンにまたがるアプリケーションの設計が必要です。

  • 99.5% の可用性と 99.99% の可用性の違いは、1 か月あたり 3.5 時間に相当します。期待されるワークロードで 99.99% の可用性を達成するには、複数の AZ が必要です。

  • 複数の AZ でワークロードを実行することにより、電力、冷却、ネットワークの障害、および火災や洪水などの自然災害のほとんどを分離できます。

  • ワークロードのためのマルチリージョン戦略の実装は、国の広い範囲に影響を与える自然災害や、リージョン全体に及ぶ技術的障害に対する保護に役立ちます。マルチリージョンアーキテクチャの実装はかなり複雑になることがあり、通常、ほとんどのワークロードには不要である点に注意してください。

このベストプラクティスを活用しない場合のリスクレベル:

実装のガイダンス

1 つのアベイラビリティーゾーンの混乱または部分的損失に基づく災害イベントについては、単一の AWS リージョン内の複数のアベイラビリティーゾーンで高可用性ワークロードを実装すると、自然災害または技術的な災害の軽減に役立ちます。各 AWS リージョンは複数のアベイラビリティーゾーンで構成され、各ゾーンは他のゾーンの障害から隔離され、かなりの距離によって分離されます。ただし、相互にかなりの距離を隔てた複数のアベラビリティーゾーンコンポーネントの損失リスクがある災害については、リージョン規模の障害を緩和するディザスタリカバリオプションを実装する必要があります。極端に高い回復力を必要とするワークロードについては (重要なインフラストラクチャ、医療関連のアプリケーション、財務システムインフラストラクチャなど)、マルチリージョン戦略が必要なことがあります。

実装手順

  1. ワークロードを評価して、回復力ニーズをマルチ AZ アプローチ (単一の AWS リージョン) で満たせるか、それともマルチリージョンアプローチが必要かを判断します。これらの要件を満たすためにマルチリージョンアーキテクチャを実装すると、複雑性が増すため、ユースケースと要件を慎重に考慮してください。回復力の要件は、ほぼ常に、単一の AWS リージョンを使用して満たすことができます。複数のリージョンを使用する必要があるかどうかを判断するときには、次のような要件を考慮してください。

    1. ディザスタリカバリ (DR): 1 つのアベイラビリティーゾーンの中断または部分的損失に基づく災害イベントについては、単一の AWS リージョン内の複数のアベイラビリティーゾーンで高可用性ワークロードを実装すると、自然災害または技術的な災害の軽減に役立ちます。相互にかなりの距離を隔てた複数のアベイラビリティーゾーンコンポーネントの損失リスクがある災害については、リージョン規模の自然災害や技術的障害を緩和するために、複数のリージョンにまたがるディザスタリカバリを実装する必要があります。

    2. 高可用性 (HA): マルチリージョンアーキテクチャ (各リージョンで複数の AZ を使用) を使用して、99.99% 以上の可用性を達成できます。

    3. スタックローカリゼーション: 世界中のオーディエンスにワークロードをデプロイするときには、異なる AWS リージョンにローカライズしたスタックをデプロイして、それらのリージョンのオーディエンスに対応できます。ローカリゼーションには、言語、通貨、および保存されるデータのタイプが含まれます。

    4. ユーザーへの近接性: 世界中のオーディエンスにワークロードをデプロイするときには、エンドユーザーに近い AWS リージョンにスタックをデプロイすることによって、レイテンシーを軽減できます。

    5. データレジデンシー: 一部のワークロードはデータレジデンシー要件の対象であり、特定のユーザーからのデータは特定の国境内にとどめる必要があります。該当する規制に基づいて、それらの国境内の AWS リージョンにスタック全体をデプロイするか、データだけをデプロイするかを選ぶことができます。

  2. AWS のサービスによって提供されるマルチ AZ 機能の例をいくつか示します。

    1. EC2 または ECS を使用してワークロードを保護するには、コンピューティングリソースの前に Elastic Load Balancer をデプロイします。次に Elastic Load Balancing は、異常なゾーンのインスタンスを検出し、トラフィックを正常なゾーンにルーティングするソリューションを提供します。

    2. ロードバランシングをサポートしない市販のソフトウェアを実行する EC2 インスタンスの場合、マルチ AZ ディザスタリカバリ方法論を実装することによって、一種の耐障害性を達成できます。

    3. Amazon ECS タスクの場合は、3 つの AZ に均等にサービスをデプロイして、可用性とコストのバランスを達成します。

    4. 非 Aurora Amazon RDS の場合、マルチ AZ を設定オプションとして選ぶことができます。プライマリデータベースインスタンスに障害が発生した場合、Amazon RDS はスタンバイデータベースを自動的に昇格させて、別のアベイラビリティーゾーンのトラフィックを受け取ります。マルチリージョンリードレプリカを作成して、回復力を高めることもできます。

  3. AWS のサービスによって提供されるマルチリージョン機能の例をいくつか示します。

    1. マルチ AZ の可用性がサービスによって自動的に提供される Amazon S3 ワークロードの場合、マルチリージョンデプロイが必要な場合は、マルチリージョンアクセスポイントを検討してください。

    2. マルチ AZ の可用性がサービスによって自動的に提供される DynamoDB テーブルの場合、既存のテーブルをグローバルテーブルに容易に変換して、複数リージョンの利点を活かすことができます。

    3. ワークロードの前に Application Load Balancer または Network Load Balancer がある場合には、AWS Global Accelerator を使用し、正常なエンドポイントを含んでいる複数のリージョンにトラフィックを向けることで、アプリケーションの可用性を高めます。

    4. AWS EventBridge を利用するアプリケーションの場合、クロスリージョンバスによってイベントを、選択したほかのリージョンに転送することを検討してください。

    5. Amazon Aurora データベースの場合、複数の AWS リージョンにまたがる Aurora グローバルデータベースを検討してください。既存のクラスターを変更して、新しいリージョンも追加できます。

    6. ワークロードに AWS Key Management Service (AWS KMS) 暗号化キーが含まれる場合は、マルチリージョンキーがアプリケーションに適切かどうかを考慮してください。

    7. その他の AWS サービス機能については、「AWS のサービスによるマルチリージョンアプリケーションの作成」のブログシリーズを参照してください。

実装計画に必要な工数レベル: 中から高

リソース

関連ドキュメント:

関連動画:

関連する例: